こんにちは。大阪・堂島のクリエイティブエージェンシー、株式会社メガホンです。
企業のマーケティング活動において、動画は非常に重要な役割を担うようになってきました。その流れで動画コンテンツが続々と制作され、公開されています。
そこで「ぜひわが社も」とお考えの場合は、関係する法律を理解しておくことを強くおすすめします。法律は解釈が難しく、「この程度であれば大丈夫だろう」と高をくくっていたら著作権に抵触して公開できなかったり、想定外のトラブルを引き起こす事態も十分にあり得ます。
今回は動画制作においてまず覚えておきたい「著作権法」、その基本と注意点について取り上げます。自社で制作する場合でも、制作会社へ依頼する場合でも知っておいて損はない情報です。ぜひ参考にしてみてください。
著作権の基本と分類
著作権法は、個人または企業などが創作した作品を適切に守ることで、文化の発展に寄与することを目的に制定された法律です。創作されたものはすべて「著作物」とみなされ、特許や商標など申請が必要なものとは違い、完成した時点で自動的に権利が生まれます。ただし、あくまで「オリジナル」であることが前提で、他者の作品を模倣したものは著作物になりません。
著作物を創作した個人・法人が「著作者」です。動画制作の場合は、プロデューサー、ディレクター、プロジェクトの責任者または彼らが所属する企業など、著作物の創作に主体的に寄与した人が著作者になります。動画の制作要素となる脚本やイラスト、楽曲などを創作した人は、動画全体の著作者にはなりませんが、それぞれの著作者には該当します。
著作権はこの著作者を対象とする「著作者人格権」と「著作財産権」、そして著作物の創作に関わる重要な立場の人が有する「著作隣接権」の3つに分類することができます。それぞれどのような権利となるのか、具体例を挙げながら紹介していきましょう。
著作人格権
著作者が著作物や著作者名の公表方法を決められるほか、創作物を他者が無断で改変されない権利を含めて「著作者人格権」と呼びます。著作者人格権は、他人に譲渡できず、必ず著作者に帰属します。
著作者人格権は、以下の3つに分類されます。
- 公表権:自身の著作物を一般に提供、提示するかどうかを決められる権利。
- 氏名公表権:著作者の実名もしくは変名をクレジットするのかを決められる権利。
- 同一性保持権:著作者以外の第三者が、著作物の内容を勝手に改変する行為を禁止する権利。
著作権(財産権)
著作物を放映、展示、翻訳、二次使用などができる権利を「著作権」または「財産権」といいます。著作権は原則的に著作者に帰属しますが、例えば出版物や音楽などの場合、出版社やレコード会社が著作権を持っている場合もあります。また、著作権は譲渡可能な権利で、合意の上で著作者から第三者へ権利を移すこともできます。
著作権は下記のように非常に細かく、多岐に渡って分類されています。これらすべてに抵触しないように気をつけなければなりません。
- 複製権:作品を録画・録音したり、アナログからデジタル化するなど、制作した動画コンテンツを複製する権利。
- 上映権:制作した動画コンテンツをスクリーンに映するなどして、公に上映する権利。
- 頒布権:コピーされた動画コンテンツの頒布をコントロールできる権利。
この他にも上演権/演奏権、公衆送信権/伝達権、口述権、展示権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権、二次利用権などに細分化されており、これらすべてに抵触しないように注意が必要です。
著作隣接権
3つ目は、主に音楽や演劇などの著作物に適用される「著作隣接権」。
動画の演出家や出演者などの実演者、動画コンテンツを配信するテレビ局やYouTubeなどの放送事業者などは著作者には当たりませんが、制作において重要な役割を果たしたとして、この「著作隣接権」が発生し、録画・複製や、インターネット上で公開する権利が認められます。
著作隣接権は、著作者に代わって著作物を普及させたり、動画の改変や無断転載といった著作権侵害に対して起訴できるため、著作者としては非常に助かる権利です。ただ、著作隣接権を持つ企業が権利を強く主張して利益を著作者に渡さないケースや、会社の倒産で権利の所在が分からなくなってしまうなどの問題もはらんでいます。
著作権を侵害した場合の罰則
もし著作権を侵害してしまったらどうなるのでしょうか。
著作者から損害賠償や不当利得の返還などを請求された場合、それに応じなければならない場合があります。
YouTubeやニコニコ動画などで投稿されているコンテンツには、テレビ番組の一部を編集してアップロードしたり、BGMに有名な楽曲を使用したり、マンガやアニメのキャラクターを登場させている動画が散見されます。もし無許可で行われている場合、これらは全て著作権侵害に当たります。
また、自社が紹介されたテレビ番組を、著作者と著作隣接権者の許諾を取らずにWebサイトへ掲載することもNGです。「自分の会社が取り上げられたのだから大丈夫だろう」という認識はトラブルの元ですので、必ず使用許可を取りましょう。
著作権侵害が起きてしまった場合、 刑事告訴に至ると「10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金」という罰則が設けられています。違法アップロードのCMでも訴求されていることなので、ご存じの方も多いかもしれません。さらに企業の場合はこの罰則に加えて、「著作権侵害をした不誠実な企業」という印象を人々に与えてしまい、社会的信用を失う可能性も高いです。
YouTubeに上がっている動画を違法だと気づかず、「これがOKなら大丈夫」と油断していると、とんでもない事態につながりますので権利関係は慎重に確認しましょう。
動画制作で特に気をつけたい著作権の注意点
著作権を侵害するおそれがあることで、動画制作に抵抗を感じる人もいるかも知れません。確かに法に抵触しないために細心の注意が必要ですが、決して難しいわけではありません。注意点を一つひとつ確認していきましょう。
1)背景への写り込み
よく問題になるのが、動画の背景に企業ロゴや有名人の広告、キャラクターなどが写り込んだケースです。
著作権法では、撮影対象となるものから「分離することが困難」であれば、写り込んだ著作物のイメージを損なうようなことがなければ侵害には当たらないとされています。ただし、写り込みが大きすぎると、動画のメインのように扱われると判断されるケースもあるため、できるだけ著作物が写り込まないように撮影する、また場合によってはぼかしの処理なども考慮しましょう。
屋外に設置されているビルや電波塔などの建造物、電車などの公共交通についても、それらを主体として撮影し、コンテンツとして販売する目的ではない限り、撮影は行って良いことになっています。ただし、背景に偶然写り込むのではなく、特定の建造物や観光スポットなどを意図的に取り上げる場合は、撮影前に所有者への承諾を取るほうが良いでしょう。
特にアミューズメント・パークについては、キャラクターの権利が厳しく管理されているケースがあるので、必ず確認を行うか、写り込みを避けることをおすすめします。
◎参考サイト:いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について(文化庁)https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/utsurikomi.html
2)音楽の使用
動画制作にはBGMやテーマソングなど、音楽を使用する場合も多いですが、もちろん音楽にも著作権が発生します。著作権で保護されているアーティストのオリジナル楽曲や企業のオリジナルテーマ、商標登録されているサウンドロゴなどを無断で使用することはNGです。
アーティストの楽曲については、JASRACが管理しているケースがほとんどです。必要な場合は所定の手続きを行い、許諾を得てから動画に起用しましょう。
◎参考サイト:音楽作品を利用される場合の手続き等(JASRAC)https://www.jasrac.or.jp/info/index.html
では、著作権侵害を避けて音楽を使用するにはどうすれば良いのでしょうか。その3つの手段をご紹介します。
著作権フリーの楽曲を利用する
著作権フリーの楽曲は数多く存在し、音源集として発売されたり、無料でダウンロードできる配布サイトもあります。著作権フリーとは、楽曲に著作権が存在しない、あるいは放棄された状態のことで、多くは商用利用も可能です。著作権フリーの楽曲を活用すれば、安心して動画制作を進めることができるでしょう。もちろん、著作権がフリーの場合でも、商用利用が可能か、楽曲の加工を行ってよいか、なども確認をしておくと安心です。
楽曲を購入する
著作権ごと楽曲を買うこともできます。著作権フリーと同様、商用利用が可能かどうか、加工の有無についても必ず確認してから購入しましょう。なお、楽曲の購入といっても、iTuneなどの音楽配信サイトでダウンロード購入するのは著作権まで買い取ったわけではありませんので、間違えないようにしましょう。
オリジナルで楽曲を作成する
動画制作の予算に余裕があれば、オリジナルの楽曲を作成する方法もあります。著作権を気にせずに利用できるだけでなく、その楽曲を他の動画でも利用することもできるため、今後も動画コンテンツを発信していく場合はオリジナル曲を作っておくと便利です。
音楽家や音楽制作会社、あるいは動画制作会社でも対応できますので、どのような音楽をつくりたいのか参考になる曲を用意したり、「にぎやかなロック調で」「カフェで流れるようにおしゃれな感じ」などイメージをまとめておくとスムーズです。
3)人物の肖像権
動画に人が登場する場合は、「肖像権」にも気をつけておきましょう。肖像権とは「自分が写っている画像や動画を守るための権利」のことで、人の顔だけでなく、名前にも適用されます。著名人の名前を勝手に動画に表示させることも、肖像権の侵害につながるのです。
モデルをキャスティングする場合は、モデル事務所やキャスティング会社などと出演にあたっての契約内容を確認しましょう。通常、使用期限や範囲、二次使用の有無などを規定しますので、そこから逸脱しないよう注意すれば問題ありません。
著名人やモデルに限らず、企業の場合は従業員に対しても肖像権はもちろん発生します。誓約書などで許諾を得ておくのはもちろん、退職後も掲載される可能性がある旨を記載しておくと、その従業員が会社を離れた後でも動画の利用ができるようになります。
4)動画配信サイト
制作した動画をより多くの人に視聴してもらうために、YouTubeやVimeo、ニコニコ動画といった動画配信サイトにアップロードしたり、各種SNS等への投稿することは多いと思います。しかし、動画配信サイトには動画の使用・複製・改変・配信などのライセンスを事業者側に提供する規定があります。著作権自体は制作者に属したままですが、動画を投稿すると各動画配信サイトが定める条件に基づいて、あらゆる場所で公開される可能性があるのです。
例えば、YouTubeがプロモーションを行う際に、ポスターなどに自社が制作した動画の一部が掲載されてもOKということになります。配信サイトやSNSを利用する際は、事前に利用規約を確認しておくと良いでしょう。
5)海外のコンテンツ
「著作権は日本の法律だし、日本でしか流れない動画なので海外の音楽や写真を使用しても気づかれないだろう」という声を耳にすることがありますが、もちろんこれはNGです。海外の著作物にも著作権はあり、国を超えて著作権保護が行われていますので、発覚すると罰則の対象になります。「海外のコンテンツなら勝手に転用しても大丈夫」という考えは非常に危険です。
動画制作を依頼した場合の著作権者
動画制作を制作会社などに発注する場合、著作権が誰に帰属するのかは確認しておきましょう。
通常、制作した動画の著作者は「制作会社」になります。依頼する側はあくまで「著作利用権(著作物を利用する権利)」を持つだけなので、利用の用途・範囲・期限などは契約時・発注時に明確にしておくと良いでしょう。著作権を自社に移したいときは、その内容で契約を取り交わす必要があります。
まとめ
想定外のトラブルや社会的なダメージを受ける事態にならないよう、著作権に関しては、社内でしっかりと確認しておくことが重要です。一度全体を理解できれば、動画制作の時に注意すべきポイントが分かるようになるはずです。動画に強い制作会社であれば著作権に関しても、しっかりと対応してくれます。「自社での制作は難しそうだな」と感じたら、一度相談してみてはどうでしょうか。
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