
「映像制作を依頼したいけど、見積書の項目がよく分からない…」
「どこまでが基本料金で、何がオプションなの?」
初めて映像制作を発注する方にとって、見積書は専門用語が多く、内容も会社ごとに違うため、比較しづらいものです。
例えば、ある会社では「編集費」が基本料金に含まれているのに、別の会社ではオプション扱いになっていることも。
また、「修正回数の制限」や「納品データの種類」など、細かい条件を見落とすと、追加費用が発生するケースもあります。
「あとから予算オーバーになってしまった…」とならないためには、見積書の基本的な項目を理解し、適切な比較ポイントを押さえておくことが大切です。
この記事では、
・映像制作の見積書に書かれている項目の意味
・見落としがちなチェックポイント
・スムーズに進めるために準備しておくべきこと
を分かりやすく解説します!
見積もりを依頼する前に、ぜひ参考にしてください。
映像制作の見積書に書かれている項目の意味
今回は、映像制作における工程ごとに「企画・構成→撮影→編集→納品」という流れで解説いたします。
進行管理費(ディレクション費)
Web制作編でご紹介しましたが、映像制作でも同じように進行管理を行うディレクター・プロデューサーの業務に対しての項目になります。
進行管理費を他社では営業管理費・プロデュース費と呼ぶ場合もあります。
会社によって、制作全体費用の10%や20%と一律ではないことが多いです。
また、その中身が具体的に明示されていることも少ないと思います。
メガホンでは、ディレクター・プロデューサーの業務と制作環境の維持費がこの項目に当たります。
具体的な業務でいくと
■制作前後
- クリエイターのアサイン
- 見積書、請求書、契約書の発行
- スケジュール作成
- トラブル対応
■制作中
- 定例ミーティング
- 資料の作成
- 成果物のチェック
- 進行状況の管理
になります。
制作規模が大きくなるとディレクター・プロデューサーの業務量も多くなります。
そのため、全体費用の割合で計算しています。
また、メガホンのディレクターは通常プロデューサーが行う進行管理も一元対応しています。
制作環境の維持費とは、デザイン・映像編集に必要なツールの利用料です。
企画構成
事前にヒアリングした内容から、主に企画や演出について決めていきます。
作成するものとしては
- 企画コンテ
- 演出コンテ
になります。
企画コンテではコンセプト設定、シナリオ作成、絵コンテ作成、シーンの構成を決めます。企画提案段階で使用する資料で、複数案を作成することもあります。
場合によっては、この段階でシナハン(シナリオ・ハンティング)を行います。
シナハンはシナリオを書く前の実地調査のことで、撮影場所や商品・サービスの詳細をより理解するためにしていきます。
企画コンテの役割としては映像の概要を説明し、大まかな方向性、映像の企画意図をクライアントや関係者と共有・提案するためのものになります。
企画が決まった後に、演出コンテを作成します。
演出コンテでは動き、演技、セリフ、カメラアングルなどの演技方法について、カット数を増やして細かく設定していきます。
基本的には企画コンテ・演出コンテを両方作りますが、企画内容によっては企画コンテだけで映像制作に入る場合もあります。
ロケハン
ロケーション・ハンティングの略になります。
撮影前に撮影地(ロケーション)を下見し、適した撮影環境を確認する作業です。光の状態や騒音、撮影スペースの確保などを事前にチェックし、撮影当日のスムーズな進行を支えます。
前述したシナハンは企画作成目的になるため、ディレクターのみで行くことが多く、ロケハンは撮影目的になるので、カメラマンも同行して撮影場所や環境をチェックします。
撮影・演出ディレクション
撮影当日のディレクション業務です。映像の演出についてチェックします。
具体的には
- シーンごとの演出意図を撮影スタッフ・キャストと共有
- リハーサルを行い、動きや画角を確認・調整
- カメラワークの調整
- 照明や美術の調整
- OKカット・NGカットの判断
をします。
進行管理・スケジュール管理も行います。現場をスムーズに進行させるために
- 各カットの撮影時間をチェックし、遅れがないか
- 時間が押している場合は、どのカットを短縮できるか
- 次のカットに必要な準備(衣装替えや撮影場所への移動)を指示
など現場全体を俯瞰しながら、進行していきます。
カメラマン
撮影を担当するカメラマンの人件費です。撮影規模・内容によって変動するため、以下のポイントに考慮する必要があります。
■カメラマンの人数
1名で対応できる場合:シンプルなインタビュー映像や小規模な撮影
複数名が必要な場合:複数アングルが必要な撮影
■撮影内容、カット数
カット数が多いほど撮影時間が長くなり、費用は増加していきます。また演出が複雑な場合、リテイク(撮り直し)の時間も見込むため撮影時間を多めに確保する必要があります。
■特殊な撮影
通常の撮影方法とは違い、特殊な機材・専門のオペレーターが必要なケースがあります。
マイクロドローン:狭い空間を飛行し、ダイナミックな映像を撮る
クレーン撮影:高所からの移動撮影が可能(建物やステージ全体の撮影に有効です)
360度カメラ撮影:視聴者が360度自由に視点を動かせる映像が撮れる
レール撮影:カメラを車輪のついた三脚や台車にのせて、なめらかに水平移動させる
アシスタント
カメラマンやディレクターをサポートするスタッフの費用です。機材の準備やセッティング、撮影中の補助などを行い、スムーズな撮影進行を支えます。
キャスト
映像内で使用するキャスト(出演者)の費用です。1年契約の場合、その映像を1年間使用できる権利が含まれます。契約期間の延長には追加費用が発生することがあります。
1年延長する場合は所属事務所によって異なりますが、おおよそ80%の追加契約費用がかかります。
スタイリスト
衣装や小物のスタイリングを担当するスタッフの費用です。
映像の世界観やコンセプトに合わせた、適切なコーディネートを提案します。
ヘアメイク
キャストのヘアメイクを担当します。撮影前にキャストの髪型やメイクを作り込み、リハーサルを行います。撮影中はメイクのタッチアップやヘアスタイルの維持、シーンごとに髪型のチェックや修正をします。スタイリストと兼任で担当する方もいます。
衣装
撮影で使用する衣装の購入またはレンタル費用です。映像の雰囲気やテーマに合った衣装を用意します。
スタジオ
撮影に使用するスタジオのレンタル費用です。多くの場合、1時間単位で費用を計上します。
スタジオの場所、大きさ、レンタルする撮影小物(椅子や植物)によって単価が変動していきます。
照明部(ライトマン)
スタジオ撮影・ロケ撮影において、照明の設計・機材の設置・調整を担当するスタッフの費用です。
カメラのアングルやキャストの位置に応じて、光の強さや方向を調整したり、シーンごとにライティングの変更を行います。ナイトシーンの撮影や太陽光を再現するときなど、光の演出・再現が必要な場合に欠かせない存在です。
録音部
セリフがあるシーンから環境音まで、すべての音が適切に録音されるようマイク選びから設置、調整を担当するスタッフの費用です。
機材費
カメラ、照明、音響機材など、撮影に必要な機材のレンタル費用です。撮影内容に応じて最適な機材が選ばれます。映像のグレードを上げるのであれば、よりスペックの高い機材を選ぶ必要があります。
撮影諸経費
撮影を進める上で発生するさまざまな追加費用になります。これらはあらかじめ見込んだ費用で、撮影に必要な実務的なコストが含まれます。
具体的には、
- 駐車場代や車両代(レンタカーやロケバスなどの移動費用)
- 昼食、ケータリング代(スタッフやキャストの食事提供費用)
- 小物購入費用(撮影小道具や消耗品)
などになります。
場合によっては、ロケ撮影の保険代・ロケ申請代(ロケ地の使用費)を別途費用として追加することがあります。
グラフィック制作
テロップデザインなど、映像に追加するグラフィック要素の制作費用です。
映像のクオリティを向上させる重要な要素となります。
モーショングラフィック制作
グラフィック制作で作成した素材を動かすアニメーション制作費用です。
トランジション(シーンの切り替え)の作成、イージング(アニメーションの速度)の調整、エフェクトの追加などをします。
編集技術
撮影した映像を編集し、構成を整える作業の費用です。カット編集、色補正、エフェクト追加などを行い、最終的な映像の完成度を高めます。
編集は、仮編集と本編集の2段階に分けて行います。
仮編集では、
- 撮影素材を仮の状態で並べてストーリーやテンポを確認
- 仮のテロップやBGMを入れてイメージを固める
- カット割りやシーンの順番を調整(ラフカット)
- クライアントや関係者と共有し、修正点の洗い出し
本編集では、
- 仮編集で確定したカットを高解像度の素材で再編集
- 色補正(カラーグレーディング)をして映像の質を向上
- 正式なテロップやエフェクト、アニメーションを追加
を行います。
MA(マルチオーディオ)
MA(Multi Audio)は、映像の音声処理を行う作業のことで、映像のクオリティを向上させるために欠かせません。BGMやSE(効果音)の調整、ノイズ除去、音のバランス調整などを行い、映像に最適なサウンドを仕上げます。
費用の内訳としては、
- スタジオ費:専用スタジオの使用料
- ミキサー技術料:音声処理を行う専門技術者の作業費
になります。
楽曲購入
映像で使用する楽曲のライセンス費用です。
著作権フリーの楽曲を購入する場合や、商用利用可能な音源をライセンス契約する場合などがあります。映像の雰囲気やコンセプトに合った音楽を選ぶことで、視聴者の印象をより強くすることができます。
場合によっては、映像のオリジナル楽曲を制作するケースもあります。作曲家や音楽プロデューサーに依頼し、映像に合わせたオーダーメイドの楽曲を作成します。
ナレーション
映像に挿入する ナレーションの収録費用(ナレーターの人件費) です。声のトーン・読み方・収録時間・知名度 によって費用が変動します。
1年契約の場合、ナレーションを1年間使用できる権利が含まれます。契約期間の延長には追加費用が発生することがあります。1年延長する場合は所属事務所によって異なりますが、おおよそ80%の追加契約費用がかかります。
エンコード
最終的な映像を目的のフォーマット(MP4、MOVなど)に変換する作業の費用です。用途に応じた最適な形式に変換し、納品されます。
相場はどのくらい?映像制作の費用相場(メガホンの場合)
映像制作の費用相場は、映像の種類・尺の長さ・クオリティ・演出内容などによって大きく異なります。
ここではメガホン映像制作の費用相場をご紹介します。
下記の費用はあくまでおおよその目安であり、映像の内容や要件によって変動します。
- インタビュー映像(1分)(撮影1日):50万円〜
- 紹介映像(1分)(撮影1日):100万円〜
- ブランドムービー(1分〜3分)(撮影2〜3日):300万円〜
- 2Dアニメーション映像(1分)(デザイン〜アニメーション):100万円〜
- 3DCG映像(1分):200万円〜
- CM(15秒〜)(撮影1日):200万円〜
映像制作は、予算次第で幅広いクオリティの調整が可能です。あらかじめご予算を共有いただくことで、ご希望の仕上がりに合わせた具体的な提案がしやすくなります。
希望するクオリティや演出に応じて、適切なプランをご案内します。
ここを見落とすと追加費用が発生!見積書チェックのポイント
映像制作の見積書をチェックする際に、見逃しがちなポイントを紹介します。用語や内容が不明な場合や、制作範囲に違和感があると感じたら、遠慮せずに質問することをおすすめします。
見積書の内訳を確認する
見積書に記載された各項目が、具体的にどの作業を含んでいるのかを必ず確認しましょう。
例えば、同じ「撮影費用」でも、撮影場所の手配、機材費、交通費などが含まれる場合と、含まれない場合があります。また、映像編集や音声処理、グラフィックデザインなど、細かい作業内容の有無もチェックが必要です。
制作範囲のヌケモレをチェックする
見積もりに含まれていると思っていた項目が実際には含まれていないことがあります。
以下の項目をしっかり確認し、抜け漏れがないようにしましょう。
- 撮影リハーサル
- ロケーションの手配や許可取り
- モーショングラフィックスやエフェクト追加
- BGMや効果音の購入費
- ナレーションの収録
- 動画の最適化やフォーマット変換
- キャスト、ナレーターの契約体系(〇年契約、出演媒体など)
スムーズな見積依頼のために準備したい情報
映像制作の見積もりを依頼する前に、準備しておくとスムーズに進む情報をご紹介します。これがあると、より具体的でプロジェクトに合った提案や見積もりを受けやすくなります。
■プロジェクトの概要
映像制作における全体像を示すものです。
- 映像制作の目的やゴール(プロモーション、ブランド戦略など)
- 映像の長さ、形式(CM、Web動画、ドキュメンタリーなど)
- ターゲット視聴者、配信先(テレビ、YouTube、SNS、イベントなど)
- 予算、納期
- どのようなメッセージやイメージを伝えたいか
概算の映像の長さやタイプ(例:30秒のCM、5分程度のWeb動画など)、どのような演出を希望するかがあると、より具体的な見積もりを作成しやすくなります。
まとめ
映像制作を依頼する際には、見積書に記載された項目をしっかり理解することが重要です。
専門用語や項目が多いため、初めて依頼する方には分かりづらい部分もあるかもしれません。予算オーバーを避けるためには、見積書の各項目が具体的にどの作業を含んでいるのかを確認し、見落としがちな追加費用の発生ポイントをしっかりチェックすることが大切です。
また、スムーズに進めるためには、プロジェクトの概要や要件を事前に明確に伝えることが、より精度の高い見積もりを得るための鍵となります。
これらのポイントを押さえて、計画的に映像制作を依頼しましょう。