中小・ベンチャー企業がブランディングを行う上で、ブランドメッセージは欠かせない要素です。ブランドメッセージは、企業の理念やビジョンを端的に表現し、顧客に対して企業の価値を伝えるための重要なツール。
本記事では、中小企業・ベンチャー企業だからこそ重要な理由と、効果的なメッセージの作り方、そして発信による効果について詳しく解説します。
ブランドメッセージとは何か
ブランドメッセージは、企業のブランディングにおいて重要な役割を果たします。しかし、ブランドメッセージの定義や役割について、正しく理解している人は少ないかもしれません。まずは、ブランドメッセージの基本的な概念と、企業にとっての意義について詳しく解説します。
ブランドメッセージの定義
ブランドメッセージとは、企業が顧客に伝えたい価値観やアイデンティティを端的に表現した言葉のことです。企業の理念やビジョン、提供する商品やサービスの特徴などを簡潔に伝えることを目的としています。社外の人から分かりづらい企業の考え方や目的、存在意義などをわかりやすくまとめた言葉だと思ってください。
ブランドメッセージの役割
ブランドメッセージは、企業のブランディングにおいて重要な役割を果たします。以下のような点が、その役割となるポイントです。
- 企業の個性や独自性を表現する
- 顧客に企業の価値観を伝える
- 社内外のステークホルダーに統一したイメージを与える
- 広告やプロモーション活動の基盤となる
- ブランドの認知度や信頼性を高める
ブランドメッセージの系統
ブランドメッセージは、その目的や訴求内容によって大きく3つに分類できます。
機能的ブランドメッセージ
商品やサービスの機能的な特徴や利点を訴求するメッセージです。品質の高さや利便性、効率性などを強調することで、顧客に対して商品やサービスの価値を伝えます。
感情的ブランドメッセージ
顧客の感情に訴えかけるメッセージです。商品やサービスを通じて得られる喜びや満足感、安心感などを強調することで、顧客との感情的なつながりを深めます。
象徴的ブランドメッセージ
企業やブランドが持つ象徴的な価値を訴求するメッセージです。企業の歴史や伝統、社会的な貢献などを強調することで、ブランドに対する信頼感や尊敬の念を醸成します。
ブランドメッセージの種類
ブランドメッセージには、いくつかの種類があります。それぞれの特徴と役割を理解することで、自社に適したブランドメッセージを選択することができるでしょう。少し専門用語が入ってきますが、最初はあくまでそういう種類があるという程度認識で大丈夫です。
ブランドステートメント
「発言」「声明」を意味するステートメントは、企業やブランドの根幹となる価値観や信念を表明するメッセージです。企業の存在意義や目指す方向性を明確に示すことで、顧客、取引先、株主、また従業員などステークホルダーに対してブランドの本質を伝えます。
ブランドパーパス
パーパスは「目的」「目標」「意図」と訳され、ビジネスシーンでは企業やブランドが社会に対して果たす役割や目的を表現するメッセージと捉えられています。自社が解決しようとする社会課題や、提供する価値を明示することで、ブランドの存在意義を訴求します。
ブランドプロミス
「約束」を意味するプロミスは、企業がお客様に対して約束する価値や便益を表現するメッセージです。商品やサービスを通じてお客様に提供する利点を約束し、それを実践することにより、ブランドへの信頼感をより高められるでしょう。
ブランドストーリー
ブランドストーリーは、文字通り企業やブランドの歴史や物語を伝えるメッセージです。ブランドが誕生した背景や、これまでの成長の軌跡をわかりやすく興味を引きやすい物語的に伝えることで、ブランドへの共感や親しみを醸成していくことができます。
タグライン
タグラインは、企業やブランドの特徴を端的に表現する、一言でいえるような短いフレーズです。印象的で覚えやすい言葉で表現することで、ブランドの認知度向上や差別化に役立ちます。
キャッチコピー
キャッチコピーは、商品やサービスの特徴や利点を印象的に伝える言葉です。顧客の心を捉える(キャッチする)ような表現を用いることで、購買意欲を高める効果が期待できます。
中小企業・ベンチャー企業におけるブランドメッセージの重要性
ブランドメッセージと聞くと、大手企業がテレビCMなどで発信する印象が強いかもしれませんが、実は中小企業がこれから成長を目指すベンチャー企業にこそ、非常に重要な役割を果たします
企業理念やビジョンを伝える役割
中小企業・ベンチャー企業にとって、大手企業ほど世の中にその存在を知られていないからこそ、自社の企業理念やビジョンわかりやすく顧客に伝える必要があります。ブランドメッセージは、これらを簡潔に表現することで、誰の、何のために存在する企業なのか、その価値観を印象付けることができます。
競合他社との差別化を図る
中小企業・ベンチャー企業は大企業に比べ、知名度も資金力も劣る場合がほとんどです。そのため、ブランドメッセージを通じて自社の強みや特徴を明確に打ち出し、競合他社に比べて何が違うのか、どこに強みがあるのか、差別化を図ることが重要になります。
顧客とのつながりを深める
顧客との感情的なつながりを深めるためのツールでもあります。まず、共感を呼ぶメッセージを発信することで、「自分にとって必要な存在だ」と感じてもらい、そこから顧客との信頼関係を構築していくことで、高いロイヤルティへとつなげていくことができるわけです。
ブランドの価値を高める
効果的なブランドメッセージは、企業やブランドの「価値」を高める役割を果たします。顧客に対して企業の強みや独自性を明確に伝えることで、顧客にとって特別に存在と認識をしてもらい、認知度や信頼性を向上させることができます。
ブランドメッセージ作成のメリット
ブランドメッセージを作成することには、当然のことながらメリットがあります。
企業の価値観を明確にできる
ブランドメッセージを作成する過程で、自社の価値観や強みを改めて見直すことができます。これにより、企業としてのアイデンティティを明確にし、ブランド構築の方向性を定めることができます。
社内の一体感が高まる
ブランドメッセージを社内で共有することで、従業員の一体感が高まります。社内のメンバーが同じ価値観を持ってブランドを体現することは、より強力なブランド力を築くことにつながります。
ブランド構築の土台となる
ブランドメッセージは、ブランド構築の土台となる重要な要素です。メッセージを軸にして、ビジュアルアイデンティティやコミュニケーション戦略などを展開することで、一貫性のあるブランディングが可能になります。
強いブランドを作ることは簡単ではありませんが、ブランドメッセージを作ることは着手しやすく、強固なブランドへの第一歩としてぜひ取り組んでいただきたいものです。
ブランドメッセージの作り方
効果的なブランドメッセージを作成するには、いくつかのポイントがあります。ステップごとに詳しく解説します。
自社の強みや特徴を洗い出す
ブランドメッセージを作る第一歩は、自社の強みや特徴を洗い出すことです。どのような価値を提供できるのか、競合他社と比べてどこが優れているのかを整理しましょう。まずは些細なところからで大丈夫です。逆に弱みがどこなのかも洗い出すこともおすすめします。
自社の強みが生かせる分野をリサーチする
自社の強みを最大限に生かすためには、それが活きる分野を見極めることが重要です。市場動向や顧客ニーズをリサーチし、自社の強みが発揮できる領域を特定しましょう。顧客の特性に合わせてネットかリアルか、調査方法を検討すると良いです。
ターゲット顧客を明確にする
ブランドメッセージは、ターゲット顧客に刺さるものでなければなりません。誰に向けてメッセージを発信するのか、ターゲット顧客の特徴やニーズ、嗜好性などを明確にしましょう。2のリサーチと併せて実施するとよいでしょう。
企業理念やビジョンを反映させる
企業理念やビジョンと整合性を取ることは外せない要素です。自社の目指す方向性や大切にしている価値観を反映させることで、一貫性のあるメッセージになります。ここでズレが生じると、ブランドメッセージの意味が薄れますので、しっかりと議論しておくべきです。
簡潔で印象的な言葉を選ぶ
ブランドメッセージは短い言葉で表現する必要があります。誰もが多くの情報に触れる中、簡潔でありながら、印象に残らなければならないからです。難解な言い回しや専門用語は避け、誰にでもひと目で理解されやすい表現を心がけましょう。「読む」よりも「見る」で認識してもらうレベルです。
社内で共有し、浸透させる
作成したブランドメッセージは、社内で共有し、浸透させることも大きな意味を持ちます。全従業員がブランドメッセージを理解し、日々の業務の中で実践できるようにしていけるよう、経営層を中心に取り組んでいくことが重要課題です。
ブランドメッセージを作る際のチェック項目
ブランドメッセージを効果的にするために、押さえておくべきいくつかのポイントについて解説していきましょう。
お客様の課題解決に向かっているか?
ブランドメッセージは、お客様の抱える課題や悩みを解決するものでなければなりません。ブランドを利用することで得られる効果や利点を明確に訴求することが重要です。
ブランドの「らしさ」がイメージできるコピーになっているか?
ブランドメッセージは、ブランドの個性や独自性を表現するものでなければなりません。メッセージを通じて、ブランドのイメージを連想させるような工夫が必要です。
すでに使われているメッセージではないか?
他社や他ブランドですでに使用されているメッセージは避けなければなりません。商標権や著作権等の権利関係についても、事前に十分な調査を行いましょう。
身内ノリになっていないか?社内でしか使われていない言葉になっていないか?
ブランドメッセージは、社内ではなく社外に向けたものです。社内でしか使われていない言葉や表現は避け、一般の人にも理解しやすい言葉を選ぶことが大切です。
求心力はあるか?
効果的なブランドメッセージは、顧客の心を掴み、愛着を持ってもらえるものでなければなりません。共感を呼ぶ言葉や、感情に訴えかける表現を取り入れることで、メッセージの求心力を高めることができます。
紛らわしい内容になっていないか?
ブランドメッセージは、誰にでも理解できるシンプルなものである必要があります。難しい言葉や複雑な表現は避け、考えなくても意味が伝わるようなメッセージを心がけましょう。
日常会話に、溶け込みやすいメッセージになっているか?
優れたブランドメッセージは、日常会話の中で自然に使われるものです。実際の会話の場面をイメージしながら、親しみやすく口にしやすい言葉を選ぶことが重要です。
文字の見た目は整えられているか?
ブランドメッセージは、視覚的な印象も大切です。文字数のバランスや、漢字とひらがなの配合バランスなど、見た目の美しさにも配慮しましょう。
ロゴとの相性など存在感のあるメッセージになっているか?
ブランドメッセージは、ロゴと組み合わせて使用されることが多いです。ロゴとの相性を考え、全体としてのバランスや存在感を確認することが必要です。
以上のチェック項目を確認することで、より効果的なブランドメッセージを作ることができるでしょう。ブランドメッセージ作りには時間と労力を要しますが、ブランドの価値を高め、顧客との絆を深めるためには欠かせないプロセスです。じっくりと取り組んでいきましょう。
効果的なブランドメッセージの事例
実際に効果的なブランドメッセージを発信している企業の事例を見ることで、ブランドメッセージの重要性やポイントをより深く理解することができます。ここでは、10社の事例をもとに、その特徴と効果について解説します。
株式会社ケイジェンド・プロダクツ(印刷・発送代行): 「イメージをカタチに!」
ケイジェンド・プロダクツの印刷・封入・発送代行ビジネスの強みを端的に表現するメッセージです。顧客のイメージを具体的な形にするという価値提供を明確に伝えることで、ブランドの差別化を図っています。
センターピア株式会社(サーバー関連): 「かかわる人の想いを『カタチ』に」
センターピア株式会社のメッセージは、商品企画・開発において顧客や関係者の想いを大切にする姿勢を表現しています。人々の想いを形にするという使命を明確に伝えることで、ブランドへの共感を得ています。
株式会社ミズノ(リサイクル・廃棄物処理): 「『棄てる』から、未来を発想する」
このメッセージは、株式会社ミズノのリサイクルや廃棄物処理に対する独自のアプローチを表現しています。「棄てる」という発想を転換し、未来につなげるという価値観を訴求することで、ブランドの独自性を打ち出しています。
アンテロープキャリアコンサルティング株式会社(人材育成・研修): 「No Challenge, No Life.」
アンテロープキャリアコンサルティング株式会社のメッセージは、挑戦することの大切さを強調しています。人材育成や研修を通じて、人々の成長を支援するという企業の使命を、印象的な言葉で表現しています。
日本住宅株式会社(住宅建築・リフォーム): 「ないものを創りだす。」
日本住宅株式会社のメッセージは、住宅建築やリフォームにおける独自の価値提供を表現しています。顧客のニーズに合わせて、これまでにない住空間を創造するという姿勢を明確に伝えることで、ブランドの差別化を図っています。
Chatwork(ビジネスチャットツール): 「シゴトがはずむ」
同社のビジネスチャットツールがもたらす効果を、非常にシンプルに表現しています。コミュニケーションの活性化により、仕事がはかどるという価値を明確に伝えることで、顧客の共感を得ています。
freee(クラウド会計ソフト): 「スモールビジネスを、世界の主役に。」
freeeのメッセージは、同社のクラウド会計ソフトが小規模ビジネスの成長を支援するという使命を表現しています。スモールビジネスの可能性を信じ、その発展を支えるという価値観を訴求することで、ブランドへの信頼感を高めています。
ヤプリ(モバイルアプリ開発): 「Mobile Tech for All」
ヤプリのメッセージは、同社のモバイルアプリ開発ツールにおける独自の価値観を表現しています。モバイル技術を万人のためのものにするという理念を明確に伝えることで、ブランドの存在意義を訴求しています。
アンドパッド(建築業テック): 「幸せを築く人を、幸せに。」
アンドパッドのメッセージは、建築現場のIT化を通じて人々の幸せを支援するという使命を表現しています。不動産に関わる人々の幸せを追求するという価値観を訴求することで、ブランドへの共感を得ています。
ウェルスナビ(資産運用サービス): 「働く世代に豊かさを」
ウェルスナビのメッセージは、同社の提供するサービスが働く世代の資産形成を支援するという価値を表現しています。働く人々の豊かさを追求するという使命を明確に伝えることで、ブランドへの信頼感を高めています。
ブランドメッセージを活用するポイント
続いて、ブランドメッセージを効果的に活用するためのポイントについて解説します。
広告やプロモーションに活用する
ブランドメッセージは、広告やプロモーションに積極的に活用しましょう。ホームページやSNS、チラシなどのさまざまな媒体で発信することで、企業の価値を広く伝えることができます。
社内コミュニケーションに取り入れる
ブランドメッセージを社内コミュニケーションに取り入れることも重要です。社員同士の会話や社内文書などにブランドメッセージを盛り込むことで、社員の一体感を高め、ブランドへの理解を深めることができます。
ブランディング戦略の一環として扱う
ブランドメッセージは、ブランディング戦略の一環として扱うことが大切です。他のブランディング施策と連動させ、一貫性のあるブランドイメージを構築しましょう。
ブランドメッセージ発信による効果
ブランドメッセージを発信することで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。その主な効果について詳しく解説します。
企業の認知度が向上する
ブランドメッセージを積極的に発信することで、企業の認知度が向上します。メッセージを通じて企業の存在や価値を伝えることで、より多くの人々に自社を知ってもらうことができます。
顧客ロイヤルティが高まる
顧客との感情的なつながりを深めるためにも、有効なツールです。共感を呼ぶメッセージを発信し続けることで、顧客のロイヤルティを高め、さらに長期的な関係構築につなげることができます。
売上や利益の増加につながる
ブランドメッセージの発信により企業の認知度や顧客ロイヤルティが向上すれば、売上や利益の増加につながります。ブランドに対する信頼感が高まることで、顧客の購買意欲が高まり、リピート率の上昇も期待できるでしょう。
優秀な人材の獲得に役立つ
魅力的なブランドメッセージを発信する企業は、優秀な人材を惹きつけることができます。企業の価値観や使命に共感する人材が集まることは、組織の活性化や競争力を強化するうえで欠かせない要素です。
ステークホルダーとの関係性が強化される
顧客だけでなく、投資家や取引先、地域社会などのステークホルダーとの関係性を強化する役割も果たします。企業の価値観や社会的責任を明確に示すことで、ステークホルダーからの理解や支持を得ることができます。
まとめ
中小企業・ベンチャー企業は大企業に比べ、知名度や資金力で劣る場合が多いため、ブランドメッセージを通じて自社の価値を効果的に伝えることが重要です。ブランドメッセージは、企業理念やビジョンを反映し、顧客とのつながりを深めるためのツール。自社の強みを活かし、ターゲット顧客に刺さるメッセージを発信することで、競合他社との差別化を図り、ブランド力を高めることができるでしょう。
また、ブランドメッセージの作成は、企業の価値観を明確にし、社内の一体感を高めるメリットもあります。ブランド構築の土台となるブランドメッセージを軸に、一貫性のあるブランディング活動を展開することが可能になります。
さらに、企業の認知度向上や顧客ロイヤルティの強化、売上や利益の増加、優秀な人材の獲得、ステークホルダーとの関係性強化など、さまざまな効果をもたらします。中小企業・ベンチャー企業こそ、限られたリソースを有効的に活用するためにも、ブランドメッセージの重要性を理解し、戦略的に活用していくことが求められます。経営者の皆様は、発信する重要性を認識し、自社のブランド力向上に積極的に取り組んでいきましょう。
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